DNAの日 (記念日 4月25日)

DNAの日

1953年4月25日、科学誌『ネイチャー』に掲載されたわずか1ページの論文が、生命科学の歴史を根本から塗り替えました。ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックによるDNA二重らせん構造の提唱です。「生命とは何か」という問いに対し、分子レベルでの答えを初めて示したこの発見は、現代の遺伝子工学やゲノム医療の礎となっています。

二重らせんモデルの構築には、ロザリンド・フランクリンが撮影したX線回折写真「写真51」が決定的な役割を果たしました。DNAがらせん構造をとることを鮮明に示したこの画像は、フランクリンの同僚モーリス・ウィルキンスを通じてワトソンの目に触れ、モデル構築の方向性を定めたとされています。フランクリン本人の同意を得ない形での共有であったことから、後世まで科学倫理上の問題として議論が続いています。1962年、ワトソン・クリック・ウィルキンスの3人はノーベル生理学・医学賞を受賞しました。フランクリンは1958年に37歳で癌により世を去っており、ノーベル賞は存命者にしか授与されないことから、その貢献は受賞の場で正式には認められませんでした。近年になって彼女の功績を再評価する動きが科学界で広まっており、「写真51」の存在は教科書や展示でも取り上げられるようになっています。

DNAの二重らせん構造が解明されたことで、遺伝情報がどのように複製・伝達されるかの仕組みが明らかになりました。2本の鎖それぞれがテンプレートとなり新たな相補鎖を合成するという「半保存的複製」の概念は、1958年にメセルソンとスタールの実験によって実証されています。この仕組みの解明なくして、現代の分子生物学は存在し得ませんでした。

その後の研究の加速は目覚ましく、1990年には国際共同プロジェクト「ヒトゲノムプロジェクト」が始動。約30億塩基対からなる人間のDNA全配列の解読を目標に掲げ、2003年4月14日——奇しくもDNAの二重らせん論文発表から50周年の直前——に完了が宣言されました。米国では同年の4月25日を「DNA Day」として記念することが議会で決議されています。