サン・ジョルディの日 (記念日 4月23日)

サン・ジョルディの日

毎年4月23日、バルセロナの街は赤いバラと本で埋め尽くされる。スペイン・カタルーニャ地方に伝わる守護聖人サン・ジョルディの祝日であり、男性が女性に赤いバラを贈り、女性が男性に本を贈るという独自の習慣が今も生き続けている。

この日の起源はカタルーニャの伝承に遡る。騎士サン・ジョルディが恐ろしいドラゴンを退治したとき、その血が大地に流れ出し、そこから美しい赤いバラが咲き誇ったとされる。この伝説が、勇気と愛の象徴として赤いバラを贈る習わしの根拠となった。サン・ジョルディは4月23日に逝去したとされており、命日を祝祭日として祀る形でこの風習が定着した。

さらに4月23日には、もう一つの重要な偶然が重なっている。『ドン・キホーテ』の作者として知られるスペインの文豪ミゲル・デ・セルバンテスが1616年のこの日に没したのだ。バラの祝日に文学の巨匠の命日が重なったことで、本を贈る習慣が加わり、カタルーニャでは「バラの日」であると同時に「本の日」としても盛大に祝われるようになった。毎年この日には「本の市」が各地で開かれ、バラと本が一体となって祝われるという独特の文化が形成されている。

この文化的な意義を国際的に広めたのがユネスコである。スペインの提案を受け、ユネスコは1995年に4月23日を「世界図書・著作権デー(世界本の日)」として認定した。読書と著作権の重要性を世界に訴えるこの記念日の原点が、カタルーニャのローカルな祝祭にあるという事実は、文化がいかにして国境を越えて広がるかを示す好例といえる。

日本では1986年(昭和61年)から、日本書店商業組合連合会と日本・カタルーニャ友好親善協会が中心となってこの日を実施している。書店でのイベントや本とバラの贈り合いキャンペーンが各地で展開され、「バラの日」「本の日」という二重の意味を持つこの記念日が日本にも根付きつつある。バレンタインデーとは異なる、知性と愛情を同時に贈るというコンセプトが、書物を大切にする文化と相性よく受け入れられている。