お香の日 (記念日 4月18日)

お香の日

595年の夏、淡路島の浜辺にひと抱えもある大きな流木が打ち上げられました。島民がそれを薪と一緒に焼いたところ、辺り一面に芳しい香りが漂い、驚いた島民はその木片を朝廷へ献上しました。これが『日本書紀』に記された日本最古のお香の記録です。推古天皇3年のこの出来事から、日本の香文化の歴史は始まります。

その流木は「沈水(じんすい)」、すなわち沈香(じんこう)と呼ばれる香木です。ジンチョウゲ科の樹木が傷や病などで傷ついたとき、防御反応として幹の内部に樹脂を蓄積したものが香木となります。樹木が育つだけで20年以上、沈香として価値を持つまでには50年、最高品質に達するには100年を超える年月が必要とされます。産地はベトナム、タイ、インドネシアなど東南アジア全域に広がり、品質によっては金よりも高価とされる希少品です。

朝廷に届けられた香木の前に立ったのが聖徳太子です。太子はこの木片から手箱と観音像を彫ったと伝わります。仏教の伝来とともに日本に根づいた香は、仏前への供香として普及し、奈良時代には正倉院に各地からの香木が納められました。平安時代になると香文化は貴族社会で独自の発展を遂げます。沈香や白檀などの香木に丁子・麝香を練り合わせた「薫物(たきもの)」が作られ、貴族たちは自ら調合した香りを衣に薫き染めて身に纏いました。御簾の向こうに漂う香りが、個性を表現する手段のひとつとなったのです。

淡路島はその後も「香りの島」であり続けています。現在、島内では国内お香生産量の約70%を担い、日本最大の産地として知られています。江戸時代に線香の製造が始まって以来、島の産業として根づき、数百年の技術が受け継がれています。

4月18日が「お香の日」とされるのは、二つの理由からです。一つは『日本書紀』の記述が「推古天皇3年夏4月」であること。もう一つは「香」という漢字を分解すると「一十八日」と読み取れることです。この記念日は、全国薫物線香組合協議会(現:日本薫物線香工業会)が1992年(平成4年)に制定しました。事務局は香りの島・兵庫県淡路市の淡路市商工会内に置かれており、香文化の普及を目的とした活動を続けています。