象供養の日 (記念日 4月15日)

象供養の日

護国寺の境内に、象牙職人たちが手を合わせる日があります。毎年4月15日に執り行われる「象供養」は、1926年(大正15年)のこの日、東京・護国寺で第1回が催されたことに始まります。象牙の恩恵によって生活が成り立っていることへの感謝を象に捧げる供養で、東京歯牙商同業組合と職人組合の楽技会が主催したとされています。その後、東京象牙美術工芸協同組合がこの日を「象供養の日」として制定しました。日本における象牙利用の歴史は古く、奈良時代にはすでに象牙製の物差しが用いられており、正倉院にも収蔵されています。江戸時代に入ると、三味線のバチや根付、印鑑、将棋の駒など、日常的な工芸品の素材として需要が広がりました。明治・大正期には職人技術も成熟し、東京の象牙工芸は「江戸象牙」として東京都の伝統工芸品に指定されるほどの地位を確立しています。第1回象供養が行われた1926年は、この産業が活況を呈していた時代にあたります。

状況が一変したのは1989年です。ワシントン条約(CITES)の締約国会議でアフリカゾウが附属書Ⅰに掲載され、翌1990年から象牙の国際商取引は原則禁止となりました。1980年代前半には年間950トンを超えていた日本の象牙輸入量は激減し、現在の国内市場規模は最盛期の10%程度と推定されています。取引業者数も1989年の76社から大幅に減少しました。

それでも象供養は途絶えることなく続けられています。規制強化という逆風の中でも、職人たちが毎年護国寺に集い、象への感謝を形にし続けているのは、伝統工芸を担う者としての矜持の表れとも言えます。4月28日には「象の日」も設けられており、1729年(享保14年)に初めて生きた象が江戸に到着したことに由来します。象牙の供養と象そのものへの注目が、春の同じ月に重なっています。