フォントの日 (記念日 4月10日)
「フォント」という言葉を、私たちは何気なく使っています。パソコンで文書を作るとき、デザインを選ぶとき——しかしその起源は、15世紀ヨーロッパの活版印刷にまで遡ります。金属を溶かして作られた活字が整然と並ぶ時代、「フォント」とは「同じサイズで書体デザインが統一された活字の一揃い」を指す言葉でした。現在ではコンピュータ上で利用できる書体データ全般を意味するようになりましたが、その本質——文字を美しく、読みやすく整える——は変わっていません。
4月10日は「フォントの日」です。「フォ(4=four)ント(10)」という語呂合わせから、東京都品川区大崎に本社を置く世界的ソフトウェア企業「アドビ システムズ株式会社」が制定しました。2017年(平成29年)に一般社団法人・日本記念日協会に認定・登録されており、デザインの根幹を支えるフォントに、あらためて注目してもらうことが目的です。
制定された2017年、アドビはGoogleと共同でオープンソースフォント「源ノ明朝(Source Han Serif)」をリリースしています。日本語・簡体中国語・繁体中国語・韓国語という東アジア4言語をカバーし、7つのウェイトと6万5,535の字形を収録した、規模の大きな多言語フォントです。ひとつのフォントで複数の言語を扱っても書体デザインの一貫性が保たれるため、多言語混在の文書制作に重宝されています。フォントの種類は多岐にわたります。横線より縦線が太く、横線の端に「ウロコ」と呼ばれる装飾のある明朝体。縦横ほぼ均一の太さで構成されるゴシック体。筆の勢いを生かした毛筆体・楷書体。ポップなイメージのポップ体など、同じ「文字」でも与える印象はまったく異なります。印刷物やウェブサイトのデザインにおいて、フォントの選択はメッセージの伝わりやすさを大きく左右する、目に見えない重要な判断です。
明朝体はその名のとおり、中国・明朝時代の印刷技術を源流としており、東アジア各地で独自の発展を遂げてきました。日本では写植(写真植字)技術が普及した20世紀中頃から、印刷物の品質が飛躍的に向上し、現在のデジタルフォントへと引き継がれています。アドビ自身も日本語フォント開発を30年以上続けており、フォントの日はそうした長い歴史と技術の積み重ねを振り返るきっかけにもなっています。