左官の日 (記念日 4月9日)
白漆喰に覆われた姫路城の大天守が、太陽光を受けて白く輝く姿は「白鷺城」の異名をとるほどです。あの白さを生み出しているのが、左官職人がコテで丁寧に塗り上げた漆喰壁です。しかし、最盛期に約30万人いたとされる左官職人は、現在およそ5万人にまで減少したといわれます。建築の工業化が進み、クロス貼りや既製品の内装材が主流となった現代において、コテで壁を塗り仕上げるという手仕事の価値は、改めて問い直されています。
左官の歴史は古く、縄文時代の竪穴住居にさかのぼります。土壁を塗って住居を構築する技術が、日本における左官の原点とされます。その後、飛鳥時代には石灰を用いた白壁技法が発展し、安土桃山時代には千利休が茶室建築に左官の技を積極的に取り入れました。江戸時代になると漆喰仕上げの技術が大きく革新され、商家の土蔵や町屋に広く用いられるようになりました。黒光りする「なまこ壁」や白壁の蔵は、江戸の町並みを形成する重要な要素であり、防火の観点からも重宝されていました。横浜・真壁・奈良など各地に残る土蔵や白壁の街並みは、今も左官の技術が受け継がれている証です。
漆喰の主成分は水酸化カルシウム(消石灰)です。石灰石を高温で焼成し、水と反応させて消石灰をつくり、そこに砂や麻・和紙などの繊維質を混ぜて練り上げます。この素材は空気中の二酸化炭素を吸収してゆっくりと硬化し、強度を増していきます。硬化後は防水性・耐火性・抗菌性に優れ、呼吸するように湿度を調整する調湿機能まで備えます。自然素材でありながら、これだけの機能を兼ね備えた建材は現代でも類を見ません。
4月9日が「左官の日」に制定されたのは、「し(4)っく(9)い(漆喰)」という語呂合わせによります。制定したのは東京都新宿区に事務局を置く一般社団法人・日本左官業組合連合会(日左連)です。
2020年には「伝統建築工匠の技:木造建造物を受け継ぐための伝統技術」がユネスコ無形文化遺産に登録され、その中に「左官(日本壁)」も含まれました。数百年の歳月をかけて磨かれてきた手仕事が、国際社会においても文化遺産として認められた瞬間でした。自然素材への関心が高まり、古民家リノベーションの需要が増す現代において、左官の技術は再評価が進んでいます。
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