獅子の日 (記念日 4月4日)
神社の参道を歩いていると、石造りの一対の像と必ず目が合います。片方は大きく口を開け、もう片方はきっと口を閉じています。どちらも「狛犬」と呼ばれることが多いですが、実はその二体は異なる存在です。
正面から向かって右が「獅子」、左が「狛犬」——これが正式な区分けとされています。獅子は口を開けた「阿形」で角を持ちません。狛犬は口を閉じた「吽形」で、額に一本の角を持ちます。もともと中国から伝来した際は、二体ともライオンをかたどった左右対称の獅子像でした。しかし日本人は左右の非対称に美しさを見いだし、片方を独自の霊獣として変形させました。その結果、有角の「狛犬」という存在が生まれました。阿吽の呼吸という言葉があるように、対を成すことで初めて完成する——そんな思想が、この石像の配置にも宿っています。二体まとめて「狛犬」と呼ばれることが多いですが、厳密には異なる生き物が一対を成しているのです。
そもそも「獅子」とは、ライオンの漢語表記に由来する言葉です。古代中国でライオンは「獅」と記され、「子」は動物を表す接尾語として添えられました。日本にはライオンが生息しないにもかかわらず、「獅子」という概念は仏教や大陸文化の流入とともに深く根付きました。
獅子の文化的影響を最もよく示すのが獅子舞です。その起源はシルクロードをさかのぼり、古代オリエントのライオン崇拝にたどり着きます。インドを経て中国に伝わったライオン信仰は、北魏の時代(4〜6世紀)には舞を伴う芸能へと昇華されていました。日本へは飛鳥時代、612年に伎楽のひとつとして朝鮮半島経由で伝来したとされています。奈良時代の獅子頭が正倉院に今も残されており、その歴史の深さを物語っています。江戸時代になると伊勢神宮の神職たちが獅子舞を携えて全国を巡り、各地の風習と交わりながら多様な形へと発展しました。
4月4日は「し(4)し(4)」の語呂合わせから「獅子の日」とされています。神社の石像も、舞台で躍動する獅子舞も、その奥には数千年を旅してきた文化の記憶が刻まれています。