アジフライの日 (記念日 3月21日)
食堂のメニューにアジフライの文字を見つけると、なんとなく安心する。特別なものでも高級なものでもないのに、それでいて手を抜くと途端に凡庸になる。アジフライとはそういう料理で、シンプルさと奥深さが同居している日本の定番おかずです。
アジフライの主役はマアジ(真鰺)。日本近海に広く生息し、長崎県や島根県を中心に多く水揚げされる馴染み深い魚です。特に鳥取県境港市は古くからアジの水揚げで知られており、鮮度の高い魚が手に入りやすい土地柄でした。アジは「味がいい」から「鯵」と書くとも言われるほど、日本人にとって長く親しまれてきた魚です。
フライとして食べる調理法が広まったのは明治時代。西洋料理の影響で揚げ物文化が根付いてから、アジフライは家庭や食堂に浸透していきました。今では「ほとんど和食と化した」と評されるほど、日本の食卓に溶け込んでいます。衣にパン粉をまとわせてカラリと揚げたその姿は、洋食の技法と日本の素材が組み合わさった、いわば日本独自の進化形です。
美味しいアジフライを作るうえで欠かせないのが、素材の鮮度。マアジは鮮度が落ちやすく、揚げれば誤魔化せると思いがちですが、実際には鮮度の差がそのまま味に出ます。刺し身で食べられるレベルの鮮度のアジを使うことで、揚げた後も身がふっくらとして、旨みが衣の中に閉じ込められるのです。
3月21日は「アジフライの日」。鳥取県境港市の株式会社角屋食品が制定した記念日で、「鯵(魚へんに参)」の「参」が3月を、「フ(2)ライ(1)」が21日を表しています。角屋食品は「日本一のアジフライカンパニー」を掲げ、境港で水揚げされた真アジだけを使用したアジフライを作り続けています。この記念日は2022年(令和4年)に日本記念日協会に認定・登録されました。制定の背景には、全国的に知名度の高い料理でありながら、地元・境港のアジの美味しさがまだ十分に伝わっていないという思いもあったといいます。
記念日の設立には、海洋資源への関心を高めるという側面もあります。マアジは身近な魚ですが、乱獲や環境変化によって漁獲量が変動しやすい魚でもあります。アジフライを美味しく食べることと、海の豊かさを守ることは、切り離せない話です。
ソースをかけるかタルタルをつけるか、レモンを絞るかどうか。アジフライの食べ方に正解はありませんが、揚げたての一口目だけは誰もが同じ顔をします。それがアジフライの力です。