精霊の日 (記念日 3月18日)

精霊の日

3月18日は、『万葉集』を代表する歌人・柿本人麻呂、平安時代の女流歌人・和泉式部、そして絶世の美女として名高い小野小町、この三人の忌日がいずれも3月18日であると古くから伝えられてきたことにちなむ「精霊の日」です。ただし、三人の命日について確かな史料は残っておらず、春の彼岸に近いこの時期に死者の霊を追悼する習わしがあったことと結びついた、長い年月の中で形成された記念日といえます。

「精霊」は「しょうりょう」と読み、死者の霊魂を指す言葉です。仏教的な意味合いと日本古来の祖霊信仰が重なり合い、特に7月・8月の「お盆」に迎え祀る先祖の霊として定着しました。盆様・先祖様などとも呼ばれ、天寿を全うした者の霊は死後33年または50年の弔い上げを終えると、死体から離れた清らかな霊質となって子孫を見守ると考えられてきました。

お盆の行事には、精霊にまつわる習俗が数多く残っています。キュウリやナスに割り箸を刺して動物に見立てた「精霊馬(しょうりょううま)」は、故人の霊がこの世とあの世を往き来するための乗り物として用意されるものです。キュウリは足の速い馬に、ナスはゆっくり帰るための牛に見立てるとされ、迎えには馬で早く来て、帰りには牛でゆっくり戻るようにとの願いが込められています。また、盆の頃に飛ぶ赤とんぼを「精霊とんぼ」と呼び、先祖の霊がとんぼに乗って帰ってくると伝える地方もあります。盆に入る夕方に門前で迎え火を焚いて精霊を迎え、盆の終わりには川や海浜で送り火を焚く「精霊送り」で見送る形が全国各地に広く残っており、長崎の「精霊流し」はその代表例として知られています。

三人の歌人はいずれも日本文学史に燦然と輝く存在です。柿本人麻呂は「歌聖」と称され、和泉式部は情熱的な恋歌で、小野小町は六歌仙・三十六歌仙の一人として後世に大きな影響を与えました。春の彼岸にほど近いこの日に、三人の霊を「精霊」として追悼する習わしが生まれたのは、和歌という言葉の芸術に命を捧げた人々への、時代を超えた敬意のあらわれといえるかもしれません。