邪神忌 (記念日 3月15日)

邪神忌

1937年3月15日、「クトゥルフ神話」の創造者として知られるハワード・フィリップス・ラヴクラフトが、腸癌のため46歳でこの世を去りました。日本のファングループはこの忌日を「邪神忌」と命名し、毎年トークイベントなどが開催されています。

ラヴクラフトは1890年8月20日、アメリカ・ロードアイランド州プロビデンスに生まれました。幼少期からグリム童話、ジュール・ヴェルヌ、アラビアン・ナイト、ギリシア神話を愛読し、夜ごと悪夢に悩まされる感受性豊かな少年でした。やがてエドガー・アラン・ポーの作品と出会い、怪奇文学への道が開かれていきます。科学雑誌『サイエンティフィック・アメリカン』への天文学関係のコラム寄稿など、知的好奇心の旺盛さも際立っていましたが、神経症のためハイスクールを退学という挫折も経験しています。

生涯を通じてプロビデンスを離れることなく、昼はブラインドを降ろしランプを灯した薄暗い部屋で、無気味な物語を書き続けました。代表作には『クトゥルフの呼び声』『インスマウスの影』『ダニッチの怪』などがあります。主な舞台はニューイングランド地方で、入念な文体と悪魔的雰囲気で怪奇現象を描いた短編が高く評価されています。しかし生前はほぼ無名のままで、パルプ雑誌への寄稿や友人との手紙のやりとりが主な活動の場でした。

死後、彼の作品は友人たちの尽力によって広く知られるようになります。宇宙的規模の恐怖、人間の理解を超えた旧支配者たちの神話体系は「クトゥルフ神話」として体系化され、コリン・ウィルソンをはじめとする後世の作家やSF宇宙冒険物に多大な影響を与えました。現代においてもゲーム、映画、漫画、小説など幅広いメディアで「クトゥルフ神話」の世界観は引用・展開され続けており、ラヴクラフトの創造した宇宙的恐怖の概念は20世紀以降のホラー・ファンタジー文化の根幹をなしています。

生前に真の評価を受けることのなかったラヴクラフトの名は、死後数十年を経て世界中のファンに知られるようになりました。邪神忌は、その孤独な創造者を偲び、クトゥルフ神話の広大な世界へ改めて思いを馳せる一日です。