サイコの日 (記念日 3月15日)
45秒の映像のために、1週間の撮影と52カットの編集が費やされました。映画『サイコ』(1960年)のシャワー室の殺害シーンは、映像表現の歴史を変えたと言われる場面です。凶器がナイフだと分かっていながら、実際の刺突を一切映さない構成が、観客の想像力を恐怖で埋め尽くしました。
原作は作家ロバート・ブロックが1959年に発表した同名小説で、20世紀を代表する猟奇殺人犯エド・ゲインの犯罪にヒントを得て書かれました。監督のアルフレッド・ヒッチコックはこの小説を映画化するにあたり、パラモント・ピクチャーズから暴力描写と性的表現を理由に激しい反対を受けました。それでも製作を強行するため、自ら監督報酬を後払いとして約270万ドルを拠出し、テレビドラマシリーズのスタッフを起用した低予算のモノクロ作品として撮り上げました。
1960年の公開後、『サイコ』はスタンリー・キューブリック監督の『スパルタカス』に次ぐ年間興行収入第2位を記録。ヒッチコックが最終的に手にした収益は約1,600万ドルにのぼったとされます。恐怖を「見せない」ことで「感じさせる」という演出手法は、後世のサスペンス・ホラー映画に多大な影響を与え、現在も映画研究の教材として世界中で取り上げられています。作曲家バーナード・ハーマンによる弦楽器の甲高い音列は、ヒッチコック自身が「映画全体の効果の33%は音楽によるものだ」と語ったほど重要な要素でした。
3月15日は「サ(3)イ(1)コ(5)」と読む語呂合わせにちなみ、「サイコの日」として制定されました。2013年4月5日に公開された映画『ヒッチコック』(監督:サーシャ・ガーヴァシ)の配給元・20世紀フォックス映画が記念日として設けたもので、日本記念日協会に登録されています。映画『ヒッチコック』は、『サイコ』製作の舞台裏と、監督を生涯支えた妻アルマ・レヴィルとの関係を描いた作品です。アルマは映画編集者・脚本家として夫の仕事に深く関わっており、その貢献はヒッチコック作品の完成度を支える大きな柱でした。