切腹最中の日 (記念日 3月14日)
「119人中118人が反対」。切腹最中が世に出るまでには、そんな逸話があります。新橋の老舗和菓子店「新正堂」の先代が商品名を提案した際、家族はもちろん顧客アンケートでもほぼ全員が反対票を投じました。2年半にわたる説得を経て、ようやく店頭に並んだのがこの「切腹最中」です。
店が建つ場所は、元禄14年(1701年)3月14日に浅野内匠頭が切腹させられた田村右京太夫屋敷跡。江戸城松の廊下で浅野が吉良上野介に斬りかかった刃傷事件の当日、幕府から即日切腹を命じられた場所です。この歴史的事実が商品名の着想となりました。その後、主君の無念を晴らすために47人の赤穂浪士が翌年の討ち入りを決行し、「忠臣蔵」として語り継がれることになります。
切腹最中の外見は、和菓子の常識を大きく外れています。通常の最中は皮でしっかりあんこを包みますが、この商品は最中の皮が大きく割れ、あんこがはみ出した状態で販売されます。あんの量も通常の40グラムに対して62グラムとたっぷり。純度の高い砂糖の大きな結晶を使い、求肥(ぎゅうひ)入りのさっぱりした甘さに仕上げています。切腹の際に腹が割れる様子を表現したとも伝わるこの見た目が、かえってインパクトをもたらし人気商品となりました。全国的な知名度を得るきっかけは、証券会社の支店長が株価下落の謝罪として顧客に配ったエピソードが全国紙で報道されたことでした。「お詫びの品」として絶妙な商品名が注目を集め、謝罪やビジネスシーンでの手土産として定番の座を確立しています。
大正元年(1912年)創業の新正堂は、東京都港区新橋4丁目に店を構えます。切腹最中以外にも「仮名手本忠臣蔵味こよみ」「景気上昇最中」など、忠臣蔵ゆかりの商品や遊び心ある商品を揃えています。3月14日の「切腹最中の日」は、浅野内匠頭の切腹という史実と、それに連なる忠臣蔵の物語を多くの人に語り継いでもらおうと新正堂が制定しました。一般社団法人・日本記念日協会にも認定・登録されています。