鯖すしの日 (記念日 3月8日)
若狭湾で水揚げされた鯖を塩で締め、京都まで一昼夜かけて運ぶ。その道中でちょうど良い塩加減になるという、日本が誇る食の知恵が「鯖街道」の文化を生みました。しかし、鯖街道は若狭から京都へ向かう一本道だけではありません。滋賀県長浜市木之本町を縦貫する北国街道もまた「第二の鯖街道」と呼ばれ、かつて海の幸を内陸へと届ける物流の要衝でした。
その北国街道沿いで、1912年(大正元年)に創業したすし店・料亭が「すし慶」です。初代「慶三」さんは大阪で修行を積んだ後、故郷の木之本に戻り、鯖の棒すしをリヤカーに積んで売り歩くことで商いを始めました。街道沿いの土地柄と、塩締め鯖の食文化が融け合うような出発点でした。創業から100年以上が経つ今も、その「鯖の棒すし」は初代のレシピを守りながら作り続けられており、有名デパートでの販売など全国への発信にも力を注いでいます。
「鯖すしの日」は、この「すし慶」が制定した記念日で、3月8日がその日にあたります。「さ(3)ば(8)」という語呂合わせによるもので、一般社団法人・日本記念日協会によって認定・登録されています。北国街道を旅人が行き来した時代から、リヤカーで売り歩いた初代、そして現代のデパート販売へ——鯖の棒すしは時代ごとの形を変えながらも、街道が結んだ食文化の記憶を一本の芯として受け継いできました。3月8日は、そんな一皿に刻まれた歴史と手仕事の積み重ねに、改めて目を向けてみる日です。また、鯖の棒すしが健康食として注目される背景には、鯖そのものの栄養価の高さがあります。青魚に豊富に含まれるDHAやEPAは、脳の働きを助け、血液をサラサラに保つとされる不飽和脂肪酸です。塩で締めることで保存性が増しつつも、こうした栄養素は損なわれにくく、発酵・熟成の過程でうま味も増すという、理にかなった調理法でもあります。