旅券の日 (記念日 2月20日)

旅券の日

日本人が海外へ出るとき、必ず携帯しなければならないパスポート。その法的根拠となる「旅券」という言葉が、日本の法令に初めて登場したのは1878年(明治11年)2月28日のことです。外務省布達第1号として「海外旅券規則」が制定され、それまで「海外行御印章」「海外行免状」と呼ばれていた文書が、初めて「旅券」という名称で統一されました。この120周年を記念して、1998年(平成10年)に外務省が2月28日を「旅券の日」と制定しました。

旅券の歴史をさかのぼると、日本最初のパスポートは明治維新よりも前、1866年に江戸幕府が発給しています。その最初の所持者は政治家でも外交官でもなく、曲芸師の隆田川浪五郎でした。海外公演のために渡航を許可されたこの一枚が、日本のパスポートの原点です。その後、パスポートが現在のような手帳型の国際標準様式に統一されたのは1920年のパリ国際会議においてで、第一次世界大戦後の国際秩序が再編される中で各国共通の形式が合意され、主権国家が自国民一人ひとりに発行する「最も国際的通用度の高い身分証明書」としての地位を確立しました。

パスポートが果たす役割は三つに整理できます。申請者の「渡航を認める」許可証としての機能、「国籍を有することを証明する」身分証明書としての機能、そして渡航先の国家に対して「人身保護を要請する」外交文書としての機能です。日本のパスポートの表紙には菊の御紋が刻まれており、これは日本国が発行主体であることを示すとともに、外国政府への保護要請という外交的性格を象徴しています。

一方、パスポートとよく混同されるのがビザ(査証)です。パスポートが出国国の政府が自国民に発行するのに対し、ビザは渡航予定国の政府が発行する入国推薦状です。パスポートに記入または貼付されるもので、「この人物の入国を推薦する」という意味を持ちます。渡航先の国によってビザが必要かどうかは異なり、日本のパスポートは世界最高水準のビザなし渡航国数を誇っています。

明治政府が西洋列強に倣って整備した旅券制度は、150年近い時を経て、デジタル化の波にも対応しています。ICチップ搭載の電子パスポートが標準となった現在も、その本質的な役割——国家が個人の渡航を保証し、国際社会に身元を示す文書——は、1878年の制定当時から変わっていません。