伝筆の日 (記念日 2月10日)

伝筆の日

筆で文字を書くことに、どこか敷居の高さを感じている人は少なくないでしょう。しかし「伝筆(つてふで)」は、そんな思い込みをやさしく取り払ってくれる筆文字のスタイルです。「筆文字が描けたら」という素朴な憧れをきっかけに、誰でも描けるようになるためのコツを集め続けて生まれた伝筆は、正確に書こうとする緊張感とも、崩しすぎて読めなくなる不安とも無縁です。ユニークで温かみのある文字が、自然と紙の上に現れてくるのが伝筆の魅力です。

伝筆という名前の「つて」には「ご縁」という意味が込められています。目に見えない想いを言葉にし、筆ペンを使って見える形にしていく。そのひと文字ひと文字が、書いた人の個性や温度を宿しながら、受け取った相手の心に届いていきます。お礼状や季節の挨拶、日頃なかなか口に出せない感謝の言葉を手書きで綴ると、印刷された文字とはまったく異なる印象を与えます。相手の記憶に残り、自然と話題になる——そんな体験が、伝筆を使い続ける人々の口から繰り返し語られています。

伝筆を普及させるために活動しているのが、愛知県名古屋市中区に拠点を置く一般社団法人・伝筆協会です。2015年に設立された同協会は、指導者育成を通じて筆に想いをのせ伝え合う文化を社会に根付かせることを目的としています。認定講師資格の付与や研究会の開催、各種セミナーの実施など、伝筆を学び・教えるための環境づくりに継続的に取り組んでいます。全国各地に広がった認定講師たちが、地域のカルチャースクールや個人教室でレッスンを行っており、年齢や性別を問わず多くの人が伝筆を楽しんでいます。2月10日は「伝筆の日」です。「ふ(2)で(10)」という語呂合わせから制定されたこの記念日は、2019年(平成31年)に一般社団法人・日本記念日協会によって認定・登録されました。筆ペン一本から始まる温かなコミュニケーションの文化を広く知ってもらうための日として、伝筆協会が大切にしている記念日です。

デジタルでのやり取りが当たり前になった時代だからこそ、手書きの文字が持つ力は際立ちます。完璧である必要はありません。むしろ少しのゆらぎや個性が、受け取る人の心をほぐします。伝筆はそのことを、筆文字を通じて静かに教えてくれます。大切な人への手紙や年賀状、メッセージカードに、自分だけの伝筆文字を添えてみてはどうでしょう。